2009年12月4日金曜日

悪人

吉田修一による小説.単行本は2007.04.06発売で読んだ文庫版は2009.11.06発売.単行本版の評判が良かったのでずっと読もうと思っていましたが,大きいとかさばるので文庫版が出るのをずっと待っていました.吉田修一の小説は芥川賞をとった「パーク・ライフ」以来ですが,心理描写というかそれもくどくならない適度に押さえられた表現が印象的だった記憶があります.今回も長編の割にはあっさり読めました.

大筋の構造としては,事件が起こりその関係者それぞれを描写していくことにより,全体像をつなぎ合わせて行く,といったところ.九州北部を舞台としており (著者の地元),方言といい個人的には異国並みに遠い地域の話ではありました.いずれの登場人物とも,ごく普通に生きてきて,その過程で特段の落ち度も無くむしろそれぞれの環境でそれなりに生きてきたものの,結果として不遇に見舞われてしまう,みたいな感じのお話です.安っぽい言葉で言えば社会が悪い,ということかもしれませんが,それぞれのちょっとした不備が突発的に集約されて暴発し,それがそれぞれに跳ね返ってくる,みたいな感じでしょうか.
こういった小説は,ちょっと前は多かったよなぁ,最近少なくなったよなぁという感じの作品でした.

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