購入したのが7/30なので,丁度2ヶ月かかりました.読み始めがバリ島だったので,実質1ヶ月半だったみたいです.クラブ三省堂カードで登録しているので,何時買ったのかが分かるのは便利かもしれません.ポイントは微々たるものなので.
高村薫の小説は,「リビエラを撃て」以降大体読んでいます.本作は,「マークスの山」「照柿」「レディジョーカー」のシリーズと「晴子情歌」「新リア王」のシリーズの融合的な形をとっていますが,ほとんど後者のシリーズの延長の位置づけでしょう.発表順的にも.内容的にも文体的にも.実は「新リア王」は読んでいないのですが,多分あまり影響は無かったと思います.全体として,あまり読みやすく無いですし,動きも少ないのでお勧めできません.本屋には結構平積みされていますが,最後まで読み切れた人は少ないんじゃ無いかと思うくらいです.
内容としては,二つの事件を軸に展開していますが,ほとんどが宗教(仏教)談義になっています.ほとんど哲学なんですが,多分これは徹底的に議論してみせることによって,実際に悩んでいる純粋な人達が,表層をこねくり回したような軽薄なものに引きずられてしまうのを防ぐ意味合いもあるんじゃないかと思います.だからあえて妥協せず難しい概念はそのまま使って論理を展開する,ということがこれでもかと続いているのではないかと.
こういった手法は,宗教とか哲学に限らず,実は数学の世界も同様です.新しい記法や文法を定義し,これまで説明困難だった事象や新しい概念を表現(記述)し,さらに展開していく手法はまさに数学の世界です.微積分や文脈自由文法とかオートマトンとか,これまで先人達が構築してきた文法のおかげで様々な恩恵が受けられています.的なことを思いながら,内容をきちんと理解することを早々に諦めて読んでいました.
「1Q84」はオウム的なものとして新興宗教が出てきますが,こちらでは明確に元オウム信者が出てきます.同じような時期に著名な作者が同じような題材を持ち出すのは,やはり時代背景が影響しているのでしょうか.