二冊といっても,一つは文庫で上下刊構成なので実質三冊なのですが,その長い方が桐野夏生著の「魂萌え!」でした.そんなに好きな作家ではないのですが(結構つらい内容が多いので),ついつい読んでしまう筆力は相変わらず見事で今回もあっという間でした.
2004年に毎日新聞で連載され,文庫版は2006年11月の出版.
これまで,「OUT」「柔らかな頬」「グロテスク」「残虐記」と読んで五冊目ですが,これまで読んできたのとは違って比較的普通に読める方の作品でした.良くある話だとは思いますが,なかなか当事者とか近い人が似たような状況にならないと,きっと理解が難しい種類のテーマをうまく扱っていると思います.これまで読んだものもそういう傾向が強いと思いますが切り口が見事,ということでしょう.
確か NHKでドラマ化されたと記憶していますが,調べると映画化もされたみたいですね.そう,現代ではいずれやってくる,しかしまだ皆があまり経験してこなかった状況をうまく先取りしている部分がある意味新鮮だったのだと思います.あと四半世紀もすれば,社会的にもあるていどノウハウが溜まるとは思いますが,それまでが辛い時期なのでしょうね,当事者にとって.そういう意味で,社会構造の変化がもたらす現実というものの対処,現在の日本に於いては戦後のいわゆる核家族化とか団塊の世代の方々の引退とその後,という状況の経験の積み重ねが今後社会的に必要になってくるのだろうとは思います.
似たような構造として,一人っ子政策をしている中国の現在,既に兄弟がほとんど居ない若者達が自立しはじめる現在とその後,についても今後いろいろ混乱は生じるのだろうな,とは思います.
しかも,あれだけの人口ですし世界に対する影響もきっと無視できないんじゃないでしょうか.ちょっと不安,と思うのは変化を嫌う年寄りということなのでしょうかね.
1 件のコメント:
2008.06.09 に乗った飛行機で機内上映していたので映画も観ました.原作と最後の方がだいぶ違いますが,良くまとめられているような気がします.ちょっとあくというかもう少しドロドロ感があった方が良いとおもいましたが,映画としてはこれくらいなのでしょう.よくある昼のドラマのような感じでした.
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